ウィルの見る鹿の事を考えた
鹿。
ドラマ版ハンニバルといえば鹿!
かっこいいですよね、この鹿。おっきくて真っ黒で羽根付いてて。
で、鹿ってなんなんだろうと混乱していたけど、整理して考えてみた。
単純に考えて、鹿はウィルの中にある「加虐性」「残忍性」「殺人」「悪」…まあハンニバル的な衝動のメタファーだと思うんだけど。
夢の中だったり幻覚でウィルが見るこの鹿の姿。元々持ち合わせていたウィルのそうゆう所を具現化するのに、初めてハンニバルに触れた、鹿の角に突き刺さった遺体とそれにむらがるカラスが使われてるのがいいですよね。
他の形ではなくて、ハンニバルに出会う事でざわつき始めるものを、ハンニバルが創ったもので表す。いいですよね。素敵ですよね。
ウィルがその衝動に飲み込まれておらず飼いならしていると自覚している時に見ているのは、鹿としての姿。自分とは形の違うもの。
ハンニバルは、鹿が表す衝動が彼自身と一体化しているから鹿人間に見える。
そして、ウィルも今や半分鹿人間。
S2でウィルがハンニバルを殺す事を想像するときに手伝うのは動物の鹿なのに、
実際檻の中からハンニバルを殺そうとした直後、自分自身に鹿の角が生えるのも、
想像の中と現実(といってもまあ幻ですけど)で鹿と鹿人間が
ちゃんと区別されているのかなって思う。
ハンニバルとジャックの両方から最後の覚悟を迫られた後、家にはホッブズがいて、彼の隣で鹿を撃つ。
鹿はあくまでハンニバルによって持ち上げられた「そうゆう衝動」で、その鹿を自分で撃つ事で、ハンニバルとの決別をしたのかなって思った。
「ほらな?どうだ」というセリフは私は「どうだ?これで満足か?」ってニュアンスで受け取ってるから、ここでもう一度ホッブズがウィルのそう言うのは、「これでいいんだろ?」ってウィルが思いたい…ハンニバルへの心残りを消したいって事かなって。
私が変に混乱していたのは、時々、鹿の前後にアラーナがあらわれていたから。
カツカツとアラーナが響かせるヒールの音とセットになってた事が多くて、
だから鹿はアラーナの事も表しているのかと思ってしまってた。
単純に、ヒールの足音と蹄の足音が似てるから=誘発音だったと思っていいのかな。
そう思っていいと決定的に思ったのが、最終回のクレジット前ラストカット。
ブラックアウトしていくウィルの視界が見ている、同じように息絶えそうな鹿。
この時、鹿はウィルでしかないんだなと思ったのと同時に、
もう一つ思った事があって。
ウィルと鹿は同一として、
ウィルが死にそうだから鹿も死にそう、鹿が死にそうだからウィルも死にそう、
それは別に改めて見せてくれなくてもわかる。
じゃあなんで見せるんだろ。
「鹿=ハンニバルとの関係の象徴」で、自分の生き死により、ハンニバルとの関係が終わっていくんだ…とウィルは最後に想った。
更に、鹿ってホッブズが狩っていた「獲物」というイメージも強く持っていて。
冒頭でホッブズを見たからその印象でそう思うのかもだかけど、
「獲物の方の鹿になっちゃったな」って思っているウィルの意識の形だった、とか。
どっちにしても、状況の説明じゃなくて「ウィルの考えたこと」の具現化なのかもしれないほうが、叙情的でいいかなという妄想でした。
あの鹿のフィギュアがあったら欲しいなあ。
ちゃんと毛で出来てる動物のフィギュアの感じで。